やってはいけない片刃の研ぎ

「以前に研いでもらったんですけど・・」と渡されたその包丁には明らかな違和感がありました。

写真では分かりづらいですが、裏押し部分の刃先が乱雑に段刃に削られていました。

「お客様で研がれたんですか?」

「いえ、他のスーパーの店頭でやってもらったんですけど・・」

このような状態はよく見かけますが業者がやったというのが驚きでした。

切刃は研がずに刃先だけグラインダーでガリっと角度付けて傷つけただけです。
手抜きしまくりですし、包丁を知っているプロのやることとは思えません。

詳し見ると・・

マイクロスコープ画像ですが、特に裏は狭い裏押しの半分を急角度で削っているのが分かると思います。

今回は業者がやったことですが、一般の方も同様のミスを犯しがちですので、ここで裏を下手に削るとどういうことが生じるのかご説明します。

はじめに下の図は出刃や柳刃などの片刃の和包丁の断面を表しています。

片刃の和包丁は主に硬い鋼(ハガネ)と軟らかい軟鉄の地金の二層構造で、裏にハガネが付いています。
ハガネは裏スキと呼ばれる凹みがあり、刃先と峰の一部分がフラットになっています。この構造により鋭い切れ味を実現し、食材が引っ付きにくいという利点もあります。

しかし・・

表だけならまだしも、裏を角度を付けて削ってしまうと刃角が鈍角になり切れが悪くなるばかりか、包丁の寿命も縮めてしまいます。

これを修正するためにフラットに研ぎ直すのですが(※黄色の部分を削る)、鈍角になった分かなり深くハガネを削らなければならなくなり、裏スキも無くなってしまう恐れがあります。

今回の包丁は裏のダメージがまだ軽症だったので、表の切刃を研ぐことで裏をそれほど減らさずに済みました。
しかし裏を角度を付けて激しく研いでしまうと形が壊れてしまい、裏スキが無くなるくらい減ってしまうこともあります。

裏スキを再度作り直すことも可能ですがその分ハガネを深く削ることになるので、そのようなことにならないように注意が必要です。

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