変形した刃線

非常にユニークな形に研がれた包丁をお預かりしました。

切先と刃元の部分が丸く削られた形をしています。ある業者に研ぎに出したところ、返って来るとこのような形になっていたそうです。機械でかなり削らないとこのようにはできないですが、研ぎ師としての独自性を出したかったのでしょうか?理由は不明です。

子供用の包丁は安全性を考えて丸く加工されていますが、ここまで大胆にはなっていません。切先のソリを強くすると切る時にまな板に当たらず使いづらいものになりますが、ここまで変形させてしまうと刃を付けても使えない部分になります。

刃元の変形

それと問題は刃元のアゴと呼ばれる角の部分です。このように刃線が歪んでいるとネギなどを切った時に繋がってしまったり、根菜や果物の皮を剥くときに使いづらく何らメリットがありません。

不思議とこのアゴの変形は研ぎに出された刃物に多く見られます。最初は欠けてしまった部分を簡易的に丸めたのかと思っていました。何故ならアゴの破損を修理するには刃元から切先までを大きく削り直さなければならないからです。時間も手間もかかるため丸くして応急処置をしていたのだろう、そう思っていました。

しかし実はそうではないことがわかりました。

水研機の砥石に原因

砥石がレコードのように水平に回転する水研機(グラインダーの一種)を使用する業者は自身も含めて多いのですが、きちんと砥石をメンテナンスせずに片減りした状態で使用すると刃元の部分が意図せず削れてしまうのです。

砥石の減りは研ぐ人の癖が出るものですが、水研機の場合は多くは円の中間部分が減って中心に近い部分と外側が残る傾向があります。刃物全体を当てて寝かせて研ぐためにアゴの部分が円盤の縁に当たりそこが削られるです。

これを予防するにはこまめにドレッシングして平面を保つことを意識しなければなりませんが、5分、10分といった短時間で数をこなすことに重点を置いている業者はメンテナンスしていないと思われます。

いろいろ不備な点があるものの、お客様は現状のままで良いそうでしたので、今回は刃線の修正はあえて致しませんでした。

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