包丁研ぎに慣れてくると、切れ味だけでなく「もっときれいに、美しく研ぎたい」と思うようになるものです。
しかし、その願いとは裏腹に、懸命に研げば研ぐほど、かえって汚く、意図しない仕上がりになっていくことも少なくありません。
今回は切れ味の話ではなく、見た目の美しさに焦点を当て、きれいに研げない主な要因をいくつか挙げてみたいと思います。
理由その1 歪みの問題
まず前提として知っておいていただきたいのは、包丁の表面は必ずしも平滑で一様ではないということです。特に手作りの鍛造品は、一見きれいに見えても、実際には凹凸があったり、歪みを抱えているものもあります。
また、自動研磨機でほぼ仕上げられる安価な包丁の場合、機械加工によるクレーター状の大きな凹みが残っていることも少なくありません。新品の状態では、それらをうまく処理して目立たないように仕上げていますが、砥石を当てることで隠れていた凹凸が露呈します。
そのため、このような包丁は、どれほど丁寧に研いでも、表面に凹凸が残る限り、見た目を完全にきれいにすることはできません。どうしても美しく仕上げたい場合は、まずこれらの凹凸を取り除く工程が必要になります。
理由その2 研ぎキズの乱れ
研ぎ跡が斑になったり、研ぎキズが目立って見えるのは、包丁表面に当たった光が乱反射するためです。
手研ぎでは、斜めや横方向の研ぎキズが交差しやすく、キズの向きが一様になりません。その結果、余計に汚く見えてしまいます。
これを防ぐには、研ぎキズの方向を揃える必要がありますが、手作業で完全に一定方向に研ぐのは容易ではありません。
ちなみに、包丁の工房では、砥石が縦に回転する「水砥」と呼ばれる機械を使って研磨しています。粗砥から中砥まで同じく縦回転の機械を使うため、包丁には横方向のキズが均一につき、いわゆるヘアライン仕上げになります。
そのため、前述のような凹凸が多少残っていても、見た目は非常にきれいに見えるのです。さらに砥石研磨後も、同じく縦回転するバフを当てることで、より美しく仕上げています。
機械ほどきれいにすることは難しくても、研ぐ方向を意識して揃えるだけで、見栄えは多少改善します。ぜひ試してみてください。
理由その3 深いキズが残っている
これは研ぎの技術と手間の問題です。
理由その2とも関連しますが、深いキズや粗い研ぎキズが残っている状態では、その上から細かい砥石で研いでも、キズは消えません。結果として研ぎキズが乱れ、きれいな仕上がりにはなりません。
そのため、砥石の番手を拙速に上げることは避けるべきです。
たとえば200番台で付けたキズは、300番台で確実に消す必要があります。古いキズを完全に消し、全体のキズを徐々に浅くしていくのが研ぎのセオリーです。
最後に
ひとつ申し上げておくと、見た目に囚われすぎると、肝心の切れ味がおろそかになりがちです。
きれいに仕上がるのは確かに気持ちの良いものですが、美しさと切れ味は必ずしも一致しません。
自身で使う包丁に過度に見た目を求めることは、必ずしも合理的とは言えないでしょう。
用途に応じて、切れ味を最優先に考えることも大切です。
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