研ぐ価値がある？

「この包丁、研ぐ価値あるかしら…？」

そのように言われて持って来られるお客様が少なくありません。これはとても難しい質問です。包丁は貴金属ではなく調理器具なので、売って値がつくものではありません。

おそらく、お客様が本当に聞きたいのは「買い替えた方がいいのか」ということだと思います。ですが、その決断はお客様自身の価値観に依ります。当店では、よほど破損していたり腐食が酷い場合を除いて、買い替えを薦めることはほとんどありません。

包丁は摩耗する道具ですから、使い続けるなら定期的に研ぐ必要があります。どんな包丁も同じです。高価な包丁だからといって研がなくて良いわけではなく、安価な包丁だからといって研ぐ価値がないわけでもありません。

ただ、安価な包丁は高価な包丁に比べて切れ味が劣るだけでなく、その持続性も短いです。つまり、安価な包丁は頻繁に研ぐ必要があり、その都度業者に出すと高価な包丁よりも費用がかさむことになります。刃持ちが悪い包丁は一ヶ月持ちませんので、毎月研ぎに出すと1年で高価な包丁が買えるほどの費用がかかります。

とはいえ、高価な包丁を購入するのは…と考える方も多いでしょう。シャープナーで間に合わせると切れ味がさらに悪くなり、結局買い換えを考えることになるかもしれません。

つまり、良い包丁を使うことは、長い目で見ればお財布に優しく、快適に料理を続けられる秘訣なのです。