包丁の手入れの哲学

錆びない包丁は無い

一般的に、包丁はすべて錆びます。例外は非金属であるセラミック包丁くらいです。

金属である以上、程度の差こそあれ腐食は避けられません。

「ステンレスは錆びない」は誤解

「ステンレスは錆びない」と思われがちですが、それは誤解です。

ステンレスは錆びにくい金属であって、錆びない金属ではありません。

鋼(ハガネ)の包丁に比べれば腐食の進行は遅く目立ちにくいものの、手入れを怠れば確実に錆びます。

ステンレスは表面に「不動態皮膜」と呼ばれる透明な酸化被膜を形成することで腐食しにくくなっています。しかし、食材を切った後に汚れを付着したまま放置したり、洗浄後に水分を残したまま保管したりすると、この保護膜が局所的に破壊され、知らないうちに腐食が進行します。

また、一口にステンレスといっても用途によって多くの種類があります。包丁に使われるステンレス鋼は、切れ味を得るために焼き入れを施した特殊な鋼材であり、スプーンやフォークなどの食器用ステンレスよりも腐食しやすいことも知っておきたいポイントです。

最初は小さな黒いシミから始まる

ステンレスの腐食は、最初は針の先ほどしかない微細な黒いシミとして現れます。

非常に小さいため見逃されやすく、多くの人は異変に気付きません。

しかし、そのまま放置すると黒い腐食が広がり、やがて赤錆も発生します。

さらに腐食が進むと、「孔食(こうしょく)」と呼ばれる深い穴状の腐食になります。これが刃先に集中すると、虫食いのように刃が欠け、切れ味は著しく低下します。

刃先に生じた孔食は刃欠けとなる
孔食が全面に生じ末期的なステンレス鋼

水洗いと乾拭きは鉄則

これを防ぐ方法は、とてもシンプルです。

使い終わったらできるだけ早く洗い、布巾でしっかりと水分を拭き取ってから保管すること。

たったそれだけです。

包丁のお手入れは決して難しくありません。この基本を続けるだけで、包丁が一生付き合える道具になるかどうかが決まるのです。

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