【検証 味くらべ】 ハガネvsステンレス

レシピ

ステンレス包丁とハガネの比較では、切れ味や研ぎ易さにおいてはハガネが優れていることには論を俟たない。一方、サビ難さや扱い易さの点ではステンレスが優位であり、圧倒的な生産量、流通量がそれを証明している。※ここでのハガネは鉄に炭素を加えた炭素鋼を指す

では肝心の味はどうなのか。

包丁はハサミや鋸と違って食材を切るものであり、ただ単純に切れれば良いという訳でもないだろう。
とは言え、刃物の製造現場では味までコミットすることは稀であり、自分自身も研ぎの状態を見切るのは食材ではない新聞紙で試し切りする程度だ。また刃物の製造、販売に携わるのは男性が多く、料理をまったくしないという人も多い。SNSなどでは包丁に造詣の深い料理人は多いが、料理にコミットする包丁業界の発信は極めて少ない。そこで私たちは包丁を使う側の体感として、下手の横好きではあるが家庭料理でいろいろ試している次第だ。

ステンレスとハガネではどちらが美味しいのか

この結論も既に明らかにはなってはいる。一部の専門家が実食とフードセンサーを使用して検証した結果、一般にハガネの方が美味しいと言われている。

しかし、人の味覚は千差万別であり、好みは十人十色。実際に試してみないと分からない部分もあるのではないかと簡単な検証をしてみることにした。

食材はスーパーで購入したマグロの中トロとサーモンの刺し身。使用する柳刃包丁はステンレスの全鋼と合わせのハガネの二種類である。

調理と実食は動画をご覧頂くとして、実はこのテストの前日に別のスーパーで購入したサーモンを試していたのだが、先の「ハガネの方が美味い」という定説を覆す結果となったのだ。試食は私達夫婦二人だが、二人ともステンレスのほうが明確に味がまろやかで美味しく感じたのだ。つまり圧倒的に美味いはずのハガネではなく、ステンレスが優位と言わざるを得なかった。

たった一度で断定はできないが、サーモンには独特の臭みというかクセがある。そのクセがステンレスの消臭効果によって軽減され、サーモンの旨味だけが感じられたのかもしれない。

そこで次の日も再検証することにした。

今度は前日とは別の店でサーモンとマグロの中トロを購入し、皿の両端に切り分けて試した。

前日の結果を踏まえると、クセのあるサーモンはステンレス、クセの無いマグロはハガネが美味いのではと予想した。

だが、意外にもどちらもハガネが優位だった。それぞれ5切れ程度食べてみたが妻は迷うこと無く全てハガネを推した。自分はサーモンに関してはステンレスかな?と迷う部分があり、どちらも甲乙つけ難い感じがして正直自信が無い。

いったいこれはどういうことなのか。

前日に購入したスーパーは鮮魚が乏しく、普段から妻の評判が悪い店のサーモン、今回のは比較的リーズナブルでありながら、品数が豊富で人気のある店の品だった。

そのため今回のサーモンはクセが少なく、ステンレスの消臭効果が勝る部分が無かったのではないかと推測した。そして一方マグロは旨味や香りを活かすハガネが圧勝だったのではないだろうか。

次は切り方を変えたり、よりクセのあるカツオやブリなど足の早い魚も試してみたい。